総評  :  審査  大西みつぐ (写真家)

 静岡県写真展に限らず、コンテスト応募はどうしても安全圏に作品を留めていく傾向にあります。これまで入賞した作品の類似系、あるいは誰が見てもわかりやすい情景など、できるだけ破綻のない絵柄をはじめから設定しがちです。今回も少し危惧していましたが、蓋を開けてみましたら、カラーの部、モノクロの部とも案外新しい取り組みによる作品が目立ちました。そこには表現する主体は自分なのだという宣言が感じられます。そして作品を見ようとするこちらに「もっと写真をよく見て欲しい」ということを良い意味で強要してきます。そこから「個性」が際立ってくるのです。例としていえば県知事賞の「神男」やモノクロ全日写連賞の「横顔」です。一見、なにが写っているか不確かなまま写真を覗き込みますが、写真ならではのディティール、奥行感など写真表現に備わる視覚的特性が息づいていることに気づきます。こうしたチャレンジ精神こそが、静岡写真の伝統だったはず。大いに刺激を受けました。
 しかし、残念なことに組写真の部が全体的に元気がありません。写真を組む前に、モチーフ、テーマをどこに求めているかが明確でない作品が多いのです。一度勉強会を開催されることをお勧めします。