「夏雲に立つ」 竹之内範明
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
どのような言葉で形容すればこの写真の世界を表わすことができるのだろうか…。紺碧の空、白く輝く雲、巨大な刃物か何かが大地に突き刺さったような超高層建築物。上方はカメラのフレーム内に収まるべくもなく、下方に小さな人影が二つ…。それがこの場を象徴的にあらわしている。ただの「美しい」光景であろうはずはないのだが、この場に立てばその異様とも思えるスケール大きさの、そして無機的な世界に圧倒されるしかないであろう。雲だけが動いているから、まるでこの巨大な光景そのものが動いていくかのような錯覚から湧き起こる不安。それに抗うようにカメラを向ける作者の高揚した目が感じられる。小さくなっていく人影は、この世界に吸い込まれてしまうのだろうか…。