「一人旅」 池田三吉
選評: 全日写連関東本部委員 中村明弘
これからどこへ向かおうとしているのか、一人の女性の旅人…。これだけの荷物と身支度。行き先は海外であろうか…。七つ道具のような小物をぶら下げたショルダーバックが大きなスーツケースの上に乗せられている。背中に背負ったリュックは丸く体に密着。体を包むオーバーコート。それらがオール鼠色。体を少し前かがみにして全身がまるで一つの「塊」となって、旅立ちへの強い意志のようなものを感じさせている。そんな風に感じさせるフレーミングが効いている。作者は撮った後、この女性と電車に乗り合わせ、少しの間いろいろな会話を楽しんだそうだ。対象を見る目、対象への洞察力は、根底に「人間が好き」という作者の想いに支えられていることを想わずにはいられない。堂々とした人物写真である。