総評     審査員  写真家 大西みつぐ

 静岡の皆さんは伝統的に作家性を持ち合わせている方々が多いという認識があります。今回もそれを楽しみにしておりました。しかしやはりコロナ禍、普段の写真活動もこのところ停滞しているのか、カラーの部では平均点止まりの作品も多く、全体としておとなしいという印象でした。それでも流石にモノクロの部はストレートフォトといえる率直な作品が目立ちました。デジタルで作り込んでいく方法も悪くはないですが、内容の伴わない「効果」だけが一人歩きする作品は現代写真の上ではちょっと古いといわざるを得ません。さらにモノクロの「調子」はそれこそ伝統として引き継がれているものです。このあたりは静岡の皆さんにはよく理解できる点かと思えます。
 組写真の部では、私たちの暮らしぶりを素朴に写された作品が最優秀賞になりました。ここには技巧も過剰な表現もありません。「私たちは今どこにいるのか」という問いかけと愛情がにじみ出ています。「私はなぜ写真を撮るのか」という切実な思いを抱いているか否かというのはとても大事な点です。誰もが綺麗に写真を撮れてしまえる時代ですからなおさら。皆さんのさらなる奮起を期待します。