第63回静岡県写真展

総評 : 審 査 員 鬼海弘雄(写真家)

たくさんの素敵な写真を見せていただきありがとうございました。

皆さんのあざとさのかけらもない心やさしい写真に、やんわりと心を揉みほぐされるような体験をさせてもらいました。写真を拝見しただけで、皆さんが仲間どうしでいい感じのお付き合いをしているのが分かります。互いに尊敬し合いながらも、時には仲間を羨ましく思ったりするような、そんなよい関係を保ちつつ、ゆっくりと共に歩んで来ているのだと思いました。

作品の品評会的比較は、小さな励みになるかもしれませんが、皆さんの程のよい紐帯にとって重い価値などは、無いのかもしれないと思いました。

皆さんが穏やかな目線を持っているのは、日本でいちばん長い県で暮らしておられ、海や山の自然に恵まれたことを日々に皮膚から沁み込ませていることの仕合わせです。同時に、手触りのある文化が育まれてきた歴史ある程のよい大きさの町に暮らしているせいもあるだろうと思ったりしました。

そのことは、効率重視の現代消費社会では、無視されがちだが人や社会にとって実に大事なことを示唆していると思います。

写真の域を超えた「人間の在り方」や写真を撮る根本的な意味を考えさせられました。たかだか写真ですが、人が生きるための模索をたんたんと続けて、より「世界」が拡がること、ますます、生きる歓びを普段の口調で言い続けてくれるようにお願いいたします。