「秋、深まる」 高林 美代冶

 

選評 : 全日写連関東本部委員 横田 正大

 

作者によると、支部の撮影旅行で訪ねた長野県小布施の街のスナップだそうです。この日は紅葉シーズンと重なり多くの観光客で小布施の街もにぎわいを増していて、あまりの人出に脇道に入り、西日の当たる民家の干し柿を見つけて撮影。露出を変え、縦位置、横位置と撮った中の1枚とのことでした。夕陽を浴びた干し柿。白壁に写る柿の影が地方の人たちの生活が伺える写真になっています。この風景を切り取ったのはさすがだと思いました。

ただ、この写真を見ると新しそうな屋根や大きく写っている白壁が、写真を散漫にしていると感じます。この写真のサブ要素は「窓に下がったすだれ、今は珍しい木製の玄関や窓枠」。「寒冷地用のボイラー。古びた郵便受けや石垣の間から咲く花など」でしょうか。

周囲を切り取るとメインの干し柿とその影が画面中央にアップされ、アイキャッチとして生きて来ます。現場の撮影条件が良くわかりませんが、もっと近づくか、300mm前後の望遠レンズで周囲を切り取ったアップにすれば写真に迫力が増したと思われます。撮影の際、ファアインダーの四隅をみて「写る範囲」を確認する事を心掛けて撮れば、引き締まった写真になったと思われます。

「秋、深まる」  高林 美代冶