「二世代」 森田 光衛

選評 : 関東本部委員 中村 明弘

きれいなモノや、びっくりするようなものに出会えば、誰でもシャッターを押すだろう。もうそこに「それがある」からだ。しかし、この写真には、「それがない」。あるのは作者の心のアンテナによって「見つけ出されたモノ」であり、「ことがら」である。作者にしか見いだされなかった、そして撮れなかった「写真」である。林に囲まれた池の中の苔むした小さな岩に育ち始めた、まさに「二世代」目の、これは杉だろうか。しかしここでこのまま無事に育つのだろうか、一抹の不安も過(よ)ぎる。そんな作者の優しい想いも伝わってくる。水面に映った周囲の木々の影と空とを美しく画面に収めたことにも、行き届いた心配りが感じられる。決して派手な写真ではないが、作者の心を感じることのできる写真に出会えた。

「二世代」  森田 光衛