「霧の中」  小林 一久

選評 : 全日写連関東本部委員  山本 敦美

 霧の日の戸外での風景を適切なフレーミングで作品にしました。プリントの調子も良く霧の雰囲気が見事に表現出来ています。霧のために、はつきりと見えない薄ぼんやりした後方の景色は何だろうか?と想像をかき立たせ、またモノクロの中にあって木々の葉色まで感じさせる見事な作品ですね。特徴ある木と枝を正面に据えて霧の中に奥に連なる木立ちの壮大さを見せた左の写真、山中での暮らしをやめて自動車共々捨てられた一軒家と奥に広がる屋敷跡の真中の写真、右側の写真は今まさに電線に止まろうとするカラスとそれへの視線を誘導するかのように配した左右の木々。それぞれに変化があって良い場面を切り取り組み合わせました。霧の現象とモノクロ化を利用して「遠近感」や「動と静」を巧みに表現した素晴らしい組写真です。