「しばしの別れ」  梅原 邦隆

選評 : 全日写連関東本部委員長 江連 康晴

 握手をする手の下には杖を持った手がおぼろげながらに映り込みがあります。とても印象的で、その場の雰囲気が伝わってきます。手だけしか写されていませんが、そこには凝縮された互いの心情が込められて伝わってくる作品になっています。光り輝く腕時計が人生の時を刻んでいるように映りますし、握り合う手にしてもまだ若々しい手と年季の入った指先がなんとも言えない効果を発揮しています。もちろんドアに映る杖も相乗効果を打ち出しています。シンプルな画面構成の中にこれだけ観る人の心を動かす物語性のある作品に仕上げています。とても素晴らしい、心打つ作品です。