「よろこびの時」 池田是伸
選評 ： 全日写連関東本部委員 中村明弘
結婚式の披露宴。ことがらの時間的な経過に関係なく、3枚の写真のイメージが幸せな雰囲気を次々にあふれ出させてくれるような作品である。①蝶ネクタイを直す婿さん。写真を撮られる前の身支度の一瞬なのかも知れない。やや緊張した生真面目そうな青年の表情が見て取れる。②は花嫁となった孫娘の腕に両手をからめるおばあちゃん。離れたくない思いの表れだろうか。そして③は「あ～ん」と花嫁さんに促されて大きな口を開けた婿さん。②も③も喜びの最高潮の場面を見事にとらえている。いわば、この2枚の「ハレ」の非日常が、①の日常「ケ」と並ぶことでいっそう輝きを増してくるという構成の組写真である。それにしても、①の男性が③を演じることになるこの「ハレ」の場とは、誰もが知る厳しい日常を二人で一緒に乗り切らせんがためのエネルギーを蓄える場なのであろう。この作品からそんなことをあらためて考えさせられた次第である。
