「初めてのドレス」 金崎茂

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 画面全体から幸福感のあふれる作品である。主人公の少女の笑顔はもちろんだが、抱っこしている母親の笑顔が丸々映し出されていないのに、写っているその口元だけからも十分その笑顔が想像できてしまうところが、この写真の魅力の一つでもある。ローポジションからの撮影のため、カメラに近い少女の足がどっしりと大きく写ってしまったのが何ともかわいい。二人の衣装から何か「ハレ」の日の撮影だったのだろうが、撮影者の喜びもよく伝わってくる。画面左上から右下へと被写体を斜め入れ、右上の空間が生まれた。そこに母親に支えられた少女の両手があり、目を引く。母親が子どもと一緒になって手を打ちながら歌でも歌っているのだろうか。その歌声が聞こえてくるようだ。