総評 : 審査  小林紀晴 (写真家)

  一昨年に続き2年ぶりの審査をやらせていただきました。全体を通しての印象は、やはりこのコロナ禍にあって身近なものを被写体として選んでいる方が多いことでした。正直なところ、写真を撮る者にとって苦しい状況が続いていることは間違いありません。例年だとごく普通に行われているお祭りや花火大会などの行事がここ一年以上、行われいなものが多々あります。だから、迷い、悩まれながら撮られていたことを感じる場面もありました。
 それでも素敵な作品がいくつもありました。やはり印象的だったのは最優秀賞の三ツ井さんの作品です。審査する中で自然と手が止まりました。ざらつきを覚えたからです。日常のなかに急にトゲが刺さったかのような感覚です。別の言い方をすれば日常が「異化」されたとも言えます。「異化」とは見慣れたものがまったく別のものに見える、別の意味を持ち出す状態をさします。
 しばらくは日常を撮ることが続きそうです。そんな中ではより写真に「異化」をもたらす、呼び込むことはとても重要なことだと考えます。上位の作品にはその傾向がおおいに感じられました。日常を改めて見直すよい機会にもなります。是非、意識してみてください。          (以上)