「 金 魚 」   石川勝男

選評 : 関東本部委員 小野崎徹

これは中国で撮られた作品ですね。一寸面白いですね。水面に人影があり、その影の部分に金魚が泳いでいます。見せ方としては、「上下を逆様にしてみました」というコメントが付いていますね。ですから、金魚の頭が下向きになってたりするんですが、これはこれで面白い効果を出していると思います。 これは金魚の養殖場なんでしょうね。金魚と言っても、鯉のようにでっかいですね。これが群れていました。で、空を反射してる明るい部分は当然写らず、この人影の部分に入った金魚がはっきり写っていて、とても怪しい雰囲気ですよね。それと、枯れた水草が丁度人の頭の辺りに面白い模様を描いています。

全体としてもう、ふにゃふにゃして直線部分の無い、何か抽象絵画を見てるような雰囲気ですね。一見モノクロのように見える中に、金魚の赤い色が刺激的で、官能的な感じがしますね。不思議な効果で、これは上下を逆様にした効果もありますね。撮ったままの向きでも、写り込みだとは分かるんですが、人の像が足を下にしてる方がより迫ってくる感じがあり、影が生きて来て、写り込みでなく人がゆらゆら立っている様にも見えてますね。 非常に着眼点が良いし、狙いもはっきりし、プリントも良い出来と思います。

(録音テープによる講評を鈴木洋一が要約)

「 金 魚 」 石川勝男