「不思議な鳥居」 栗田百合子

選評 : 関東本部 小野崎徹

何とも不思議な雰囲気の情景ですね。本当に、栗田さんも、こんなところに小さな赤鳥居があるなんて驚きましたと、書いてますね。この辺を護っているのでしょうかというコメントですが、周りの木がぼさぼさなのでちょっと撮るのを躊躇ったというんでしょうかね、一寸どうしようかと思ったというふうに書いてありますが、でも、これをシャッタを押したというのは、良い判断だったんではないでしょうか。 先ず、この鳥居の佇まい、普通の木を切って丸太にして、それもぐにゃっと曲がった切った木を乾かしてそのまんま適当に鳥居にしたみたいですね。なんか鎹を打ち込んで、ちょっと臍を切ってはあるんですけど、鎹で止めてあるだけですね。それに朱い塗料を塗って、まぁこう言っちゃ失礼ですけど、鳥居にみせかけたみたいな感じがしますね。でも、こんなところにあるということは、まぁ何かしら意味があるのでしょうが、この周りの景色を考えてみると何か色々想像が膨らんでしまいますよね。これから何かお稲荷さんでも作るのか、それとも何か自分の秘密のしるしなのか、ちょっと作った人に聞いてみたいですね。

それで、真ん中に道を歩いて行く人が居るんですが、最初、これは栗田さんがお友達でも立たせて撮ったのかと思ったんですが、良く見ると農作業に出掛ける人のようですね、肩から何か農具を担いでいらっしゃって手にもちゃんと軍手をしているようです。 それでまぁ、シャッタチャンスとしてはですね、悪くはないんですけど、もうひとつ欲を言えば、道路の真ん中に丁度木漏れ日が射していますが、人が其処に来たときにシャッタを押していれば、この人物がスポットライトを浴びたようにはっきり描写されて、存在感が上がって目立ったんじゃないでしょうか。そうすると、此の朱い鳥居と此の人物の組み合わせで、もっと何かストーリー性というか想像が膨らむような気がします。まぁ、このままでも人物だというのは分かるんですが、もう少しこの人物のディテールが分かるにはやっぱり此の、明るいところに入った瞬間しかないと思うんですよね。此のシャッタチャンスとしては非常に難しい、1コマか2コマか切れるかどうかというところですよね。まぁ、でも、此れは出会い頭にふと思って撮られたんでしょうけども、やっぱり作品にするという意識を持って、シャッタを押すと、もっともっと出来上がりが良くなるんじゃないかと思いますね。(録音テープによる講評を鈴木洋一が要約)特記事項:フィルム紛失のため、プリントをオリンパスSZ-30MRで接写

「不思議な鳥居」  栗田百合子