「晩秋の光跡」 高山 申二
選評:全日写連関東本部委員 横田 正大
作者によると、今年の紅葉はどこもきれいで、長野県北部の旅行先で見つけた神社の境内ではしめ縄に吹き寄せる風がのどかだったそうです。ただシャッターを切るだけでは面白く無い為しめ縄にピントを合わせ、ズームレンズを動かして倍率を代えて撮影したそうです。また以前は直進式のズームを使用していたが、今持っている回転式は使いにくいと感じたそうです。
シルエットの鳥居を大胆に取り入れた構図をズームで光跡を流すように表現しています。作者の印象に残った紅葉のきれいさや、しめ縄に吹くのんびりした風の揺らぎなどはこの撮影技術の前にどこかに吹き飛んで(しめ縄はどこに消えた)しまっています。全く、意図の違う写真表現になっているように思いました。
この写真を見た時、人間の不安定な心理、動揺する心の内。信仰の深い人ならば神秘的な気持ちに出会った時の目に焼き付いた風景など、自己の内面など、心象風景として表現すべき手法のような気がします。真冬の鉛色の天気、日没直前の暗闇に近い境内などなら、心象的なイメージになったでしょう。
「晩秋の光跡」 高山 申二