「気球と竹灯り」 静岡市葵区前林

竹久忠吾 2016年10月22日 撮影

秋の部 優秀作品賞受賞作品

<全日写連関東本部委員より>

夕方のブルーアワーに巨大な気球がポッカリ上がって、下には竹の灯篭の灯りが美しい。露出の難しい被写体を上手く捉えました。コメントにあったこの麻機遊水地のイベントの意義が将来も語り継がれるとよいですね。

この様なイベントは各地で見かけますが、これはまた大きな気球で見事です。第二東名の影響で大分変わった遊水地に、夕暮れせまる薄色のなか、上手く灯りを捉え、その場の雰囲気がよく伝わります。

■撮影者コメント

静岡市の北、麻機れんこんでも有名な沼地を多く持つ麻機地区の「遊水地」は、「家族みんなで遊水地へ」を合言葉に、その地の利を生かした地域の取り組みが進んでいます。「あさはた沼フェスタ」もその一つで、自然体験として「幻のカヤネズミ探し」「竹灯り作り」「気球体験」、家康も愛したという「特産・麻機れんこん、沼飯グランプリ」などが行われました。

1973年(昭和48年)の「七夕豪雨」では、麻機地区も大きな被害を受けました。沼地は大きな泥の海と化し、牛が何頭も浮いていたりした光景を思い出します。罹災した方も多く、亡くなった方もおられたそうです。そんな記憶を残したいと2013年に「竹灯り」を田んぼの中に並べ、40周年の節目として慰霊の行事を行ったこともありました。今年の「竹灯り」は、そういう思いもすっかり薄れてしまい、この「フェスタ」をにぎやかに飾るだけのものとなってしまったようにも思いました。

しかし、麻機の山々に囲まれ普段は「何もない」この遊水地に、大きな気球が浮かび、3000本の竹灯りが並ぶ光景は、別世界のようではありました。

 「気球と竹灯り」  竹久忠吾