「踊り手」 池田是伸

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

鳴子を両手に、夜の仮設舞台で「よさこい」を踊る少女の動きの一瞬を写し止めた。フラッシュの閃光が彼女のきりりとした表情を捉えている。額の汗が光り、激しい踊りが佳境に入ったことを伝える。「よさこい」といえば、踊り手たちのはちきれんばかりの笑顔に圧倒されてしまうのだが、作者の狙いは、するどく「にらめかえす」この少女の一瞬の表情にあったのだろう。背景に鉄骨のパイプが幾何学模様を、下方には遠くの山や松がシルエットを描き出す。その薄暗い空間に照明ライトが灯る。今宵生まれた、つかの間の夢の舞台に舞う踊り手の存在感を、強く印象付ける作品になった。

「踊り手」 池田是伸