「視線の先に」 矢島一美

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

しゃがんで頬杖をつくおしゃれな女性と人気の外国犬…、もちろんそれだけではない。その後ろにホーロー看板、タイル張りの壁、竹の柵、陶器の植木鉢、木製の大きなプランターなどなど、昭和レトロな雰囲気がいっぱいのロケーション。その対比が「写真になる!」という作者の直感を捉えたに違いない。女性と犬の目線がそろって同じ方向を見ている瞬間をとらえたのも面白い。さらに後ろに大きな車椅子マークの書かれた板が掲げてあるが、これは、「障害を持つ人々が住みやすい街づくりの推進」を目指し50年前に世界的に承認されたマークである。(正式名称は「障害者のための国際シンボルマーク」という)。

平成が終わろうとする今、時代を写し遺していくことのできる写真というものの「大切さ」を改めて考えさせられた一枚である。

「視線の先に」 矢島一美