「夜景列車」 中村紀子

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

夕暮れの中を行く列車の窓からの撮影だろうか、流れゆく風景は、時の流れそのものでもある。カメラはそれを瞬間留めたつもりなのだが、引きはがされるようにして異空間に運ばれてしまう。左と真ん中の写真からはそんな動的なイメージが浮かんで来る。右は、その行き着いたところなのかもしれない。広く暗い空間の中にそこだけがまぶしいほどに明るく区切られた空間の前を、人々は一人、また一人と歩いていく…。真ん中の写真との繋がりは不明なのだが、この「銀河鉄道」から降り立った乗客たちなのかもしれない。たった3枚の写真が、そんな大きなスケールの物語をも感じさせる組写真である。組写真というのは、作者の想いを受け止めつつもそれを超えて、はるかに「イメージの旅」の中を走り抜ける。