「見知らぬ街」(3枚組) 戸田典子

選評 : 全日写連関東本部委員 山本敦美
 カメラのレンズと現実の景色の問に水槽なとのフィルターの役目となるものを挟むことによって不思議で異様な世界が作り出されました。そして、アンダー目のプリントも意図する作品の効果を強めています。アウトフォーカスにしたり、歪めたり、また顔を隠した得体の知れないような人物が行き交う恐ろしげなここは一体何処なんだろう・・? と怖いもの見たさと好奇心で思考が吸い込まれるように引きつけられてしまいます。左から鯉の泳ぐ大きな水槽の向こうにうごめく人々の写真から始まって、歪んで何だかよく判らない街を通過して右へ通り抜けて行く黒すくめで胴体を真っ二つにされた人物はいったい何者で何処へ向かうのか・・・? 実に興味津々です。この作品からは見知らぬ街でのオドロ恐ろしい「不安感」みたいなものがよく伝わってきましたが、一方、見知らぬ街へ足を踏み入れると、その街に対す未知への興昧やワクワクとした「期待感」というのも逆に感じられるものです。3枚に掏らず枚数をもっと増やし「陰」と「陽」を組合わせた「群写真」などで見知らぬ街を表現してみるのも面白いかもしれませんね。