「番長」  渡邉 修一郎

選評 : 全日写連関東本部副委員  神尾 一

 動物園での撮影と言うから、狭い檻の中での猿の一瞬の表情を、絶妙なタイミングで捉えた、動物のスナップ写真と言う事になる。何よりもこの作品が優れているのは、一瞬の猿の視線の動きを見逃さずに望遠レンズでピシャリとピントを合わせて撮影した技術的な面の秀逸性であろう。又、サルの種類は分からないが、これが普通のニホンザルであったらありきたりの写真となり、最優秀作品とはならなかった。何かリーゼントカットの様な髪型に、作者は『番長』と言うタイトルを付けた様だが、確かに一昔前の野球選手の横顔に似ていて、思わず、なるほどと納得してしまう。光の読み方も巧く、細い体毛や、顔のしわ、鋭い眼差しが良く捉えられている。ただ、元のデジタル画像をモニターで見ると、更にリーゼントカットの髪型とバックとの境目や、細かい顔のしわ、瞳の質感等も良く写し撮られているので、暗部をつぶさずもう少し焼き込んだ方が、更に迫力のある写真になったのではないかと思う。何れにしても、動物園での撮影とは思えぬ野性味溢れた素晴らしい作品である。