「常泉寺の秋」  大石 憲一

選評 : 全日写連関東本部副委員 神尾 一

 非常に素直な良い作品である。秋を代表する紅白の彼岸花が主題であるが、敢えて引いて撮った事によって、周りの情景、更にはこの場の空気感も見る者に伝わって来て、秋の寂しさが良く表現されて居る。構図も巧みで、何処か山間の寺の境内であろうが、主題の彼岸花の手前に大きなヤブランを配し、石仏群の右奥に多宝塔も入れた事によって、前景、中景、遠景と、構成されていて、見る者の視線が右から左、左から右へと“く”の字型に誘導される事で、画面に奥行きが出た。作者によれば、トリミングも画像処理もしていないと言うので、それが却ってこの作品の“自然さ”を醸し出しているのであろう。自分の見たまま、感じた儘をそのまま表現できる作者の“自然流”は逆に強い個性となって居るのでこれからもこの様な作風を貫いてほしい。