「雷雲接近」  鳥羽 明

選評 : 全日写連関東本部委員  山本 敦美

 空が俄かに曇ってすぐにでも激しい雷雨が来そうな気配を察知し、建設中の高層ビルの最上階で働いている作業員たちが大急ぎで防災対策をし退避しようとしているところです。作者は偶然近くの高い建物からそれを目撃し、すかさずカメラを取り出してシャッターを切りました。上空には恐ろしげな黒い雲、その下の薄くもやった下界にはビルの屋根が広がって建設中のこの高層ビルが身もすくむような半端でない高さだとわかります。さらに荒々しくむき出しの鋼材や落下防止用のネットなど雑然とした建設現場、そしてその高所で働く人達の緊迫した状況などが非常にリアルに表現出来たと思います。絶妙な天候状況に恵まれ、普段お目にかかれないような場所に居合わせた幸運と、作者の鋭い感性がこの傑作を生みました。モノクロにして色を省いたプリントも成功しましたね。