「階段で」  藤田 寛司

 選評: 全日写連関東本部委員 中村 明弘

 若い女性たちが集まっておいしそうに飲み物をすすっている。明らかに日常の光景なのだが、何か違和感のある作品である。建物や階段がモザイク状に四角いブロックの集合体で埋め尽くされた画面。その中に突然どこからか舞い降りたように、妙に生々しく若い女性たち。その人物たちが描く「S字」をたどった先には大きなスーツケースを運び上げる女性とまるでその女性に引っ張られてでもいるかのような男性の姿が…。
 全く不可解で脈絡も何もないこの光景…。「なんだろうこれは」と「写真を読むわくわく感」を見るものに与えてくれる作品である。