「流鏑馬」 藤田寛司
選評 : 全日写連関東本部委員 中村 明弘
同名のもう一枚の写真とどちらを「推薦」とするか迷ってしまった。その写真はモノクロで、駆け抜ける馬と射手がブレて画面を占領し、その馬の両足の間にスポッと御幣を持った判定員3人が小さく入り込んだ写真だった。それもみごとなフレーミングの写真だった。この3人をもう少し大きく見たいと思ったらこの写真が現れた。こちらの一枚は明らかに3人がテーマ。あえて主題をこちらにずらした点が面白く、カラーにしたことで彼らの黄赤色の衣装が目に飛び込んできて、それぞれの表情がたっぷりと楽しめる。そしてよく見ると射手の射た鏑矢が小さな的の寸前まで来ているのだ。さらに馬のしっぽの一部、後足、蹴り上げた土などが写し止められていることを発見…、見つけながらわくわくしてきた。よく見かける流鏑馬の写真と全く違う作者の目の付け所の新鮮さ、みごとさに驚かされた作品である。(後日作者の話から、鏑矢がなぜこんな状態で写ったのかが分かったが、黙っていた方が面白いかも…。)