「ゾンビ・ブラザーズ」  池田 三吉

選評 : 全日写連関東本部委員  中村 明弘

 それらしい化粧と衣装で仮装した兄弟が、カメラの前でニコリともしないで突っ立っている。ゾンビとは死体のまま蘇った人間のことらしいから、こんなに素直に写されるなんてふさわしくないのかもしれないが、この幼い二人に「ゾンビ」を演じようなど言う考えは全く無いのだろう。そのギャップをとらえたところが面白い。広い街中の空間を生かしたフレーミングは絶妙である。小さい方のゾンビの指が左右同じように「中指と人差しを組んでいる」のは、この子の癖なのだろうか。何かありそうで妙に惹かれる。横位置で、ぐっと近づいたら、表情も少し違ってきたかもしれないし、この指先から上でまとめた横位置は、作者自身にも新鮮な刺激になったかもしれない。