「 信頼 」  諸伏 敏昭 

選評 : 全日写連関東本部委員  中村 明弘

「頭絡」を取り付けようとする女性とじっとしている馬の様子。暗い馬舎(うまや)の奥に小さく窓の光。人と馬との間に通い合う絆のようなものが象徴的に描かれた作品である。「頭絡」は「馬の頭から顎、頬、鼻の上、うなじにわたって装着される細い革でできた道具」。なるほど、こうやって取り付けるものなのだと、よくわかる。これが馬の口にくわえさせる「ハミ」を上からつっているのだ。何の躊躇もなく、淡々と進むいつもの作業なのだろうが、こんなものを頭(顔)に取り付けられる馬の身になったら、そうとうおおぼったく感じるものなのだろうと思うが、案外そうでもないのかも。(「おおぼったい」は、「なんとなく覆われているような気がして不快だ)というような意味の静岡の方言」)馬の片目だけが見えているのも印象的だ。その目が女性をじっと睨んでいるようにも見える。まるで大きな壺か何かを肩に担ぐかのように馬の頭を抱え込んだところをカメラは巧くとらえている。外光がちょうどスポットライトのように当たり、育まれた信頼関係あってのこの一体感を浮き立たせている。また丁寧な、美しいモノクロプリントだからこそ、それが伝わってくる。