「シャギリ少年」 藤田 寛司
選評 : 全日写連関東本部委員 中村 明弘
「シャギリ」の練習風景であろうか。祭り当日なのかもしれない。太鼓台の下にはきちんとゴムマットが敷かれ、太鼓の胴がよく磨かれて黒光りしている。いかにも大事なことの行われる場だということが伝わってくる。主人公はすっかり祭り衣装が身についた少年。摺り鉦と「しもく」を手にしている。その「しもく」がブレている。もう、鉦を鳴らしているのだ。すぐ後ろから太鼓も鳴り出した。その音はこれから一層大きくにぎやかになっていくのだろう。少年のこの笑顔が魅力的だ。リラックスした姿、表情からは、これから始まる祭りへの期待感に胸を膨らませている様子が見て取れる。右手前に黄色い服の女の子が登場。少年の笑顔は「ぼくもやってるよ!」という笑顔。作者は、人々がだんだん登場し、本番前の気分が盛り上がり始めたこの場の空気感を、少年を主人公にしてうまくとらえている。西日が、少年の頭に天使の輪をつくっている。それも印象的な作品である。