「光見えない積日」  青木 照実

選評 : 全日写連関東本部副委員 神尾 一

 最初に見た時は一瞬モノクロ写真かと思ったが、そうではなくて彩度を落として色抜きをしたカラー写真であった。作者は今の世相、或いは自らの今の心情を重ねてこの様な作品に仕上げたものと思われる。この様な組写真は、下町のストリートスナップや、催事や行事の紹介写真では無いので分析するのは難しいが、写真を“陰”と、“陽”に分けるとしたら“陰”であろう。何か不思議な陰陽道の様な世界観で、左の写真の狐の置物や、右の写真の龍?の彫刻から、人を寄せ付けない神聖な場所、或いは人の立ち入りを許さない結界の様な物を連想させる。画面構成も素晴らしく、見る者の視線を左の強い写真で固定し、中央のトンネル効果の写真で更に奥に誘い、右の写真に余韻を残して“結”とする見事な構成だと思う。視線の流れの他にも、撮影距離に変化を持たせた事で、組写真全体にリズム感が有り、見る者の想像力をより?き立てる新しいタイプの心象写真ではないだろうか。個人的には、右の写真の龍の彫り物をほんの少し明るくしても良いのでは、と、思うがどうだろうか?