「写すなー」 石川 昭

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

最近の流行りの「推し」…ではないが、犬や猫の「かわいい」「おもしろ」動画があふれている昨今、この作品のカエル君には「どっこい、こちとらはそんなヤワなもんといっしょにされちゃあたまんねえ!」と啖呵でも切っているかのような迫力がある。作者の手の中で藻掻くその足は、むなしく空振り…、カメラの真ん前ににゅっと突き出されている。作者はカエルの腹の模様にでも関心があったのだろうか、わざわざひっくり返して写真を撮っている。ひっくり返されたカエルの方はさぞ驚いたことだろう。まさしく「写すな~」と叫びたい思い…。よく伝わってくる。カエルの皮膚のぬめりや、びくびくと動く柔らかな筋肉などが作者の掴んだ手に伝わる。その肌感覚が写真を通じて見る側にも感じられ、カエルを平気でつかむことのできた少年の頃がちらっと頭をよぎった。このカエル君、まさか写真に撮られこうして世間にさらされることになろうとは…。ストレートで力強く、そして何の衒(てら)いもない写真に出会えた。