「法要の後」 近藤文徳

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 「お世話になりました」「いずれまた」などと少し抑え気味ではあるものの、にこやかに挨拶が交わされる。法要を終えて三々五々親戚が帰っていく。こんなことでもなければなかなか会えない遠くの親戚も来ていたりして、子どもが「あの人は誰?」などと母親に聞いたりする。そんな人と人とのつながりが画面からにじみ出てくるような作品である。中央のご婦人は言わば親戚の中の「長老」格の一人なのだろう。すくっと腰を伸ばした姿勢は若いころから少しも変わらない…。右の恰幅のいい男性もこの長老には頭が上がらない。左の女の子の「だれ?」という表情が面白い。カメラがとらえたものは「親戚」というものの人間模様の一場面。モノクロにしたことでその「ことがら」が印象深く描き出された作品である。