「僕の基地」 櫻井吉正

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 目の前の光景を撮っただけなのに、どうしてこんな不思議な雰囲気を持った写真になるのだろう…。大きな滑り台の降り口だろうか、真っ赤な口が開いている。そこにはまり込んだように少年がいる。これから滑り降りるようでもなく、ここに居ること自体を楽しんでいる風なのである。空には昼の月がいつもより明るく浮いている。その下、遠くに森も見える。少しカラー彩度を高くしているので、いっそう現実を一つ飛び越した表現になった。写真は面白い。それをあらためて強く感じさせる写真である。