「水辺のひととき」 池田三吉

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 たっぷりと水の流れる小川と林を背に二人の少年が立っている。シャツに水がかかっているところを見ると二人はこの小川のせせらぎの中にいるようだ。二人は兄弟なのだ。揃いのTシャツと、似たような帽子と…。この二人だからこそ撮った、という写真である。撮られた少年たちも、二人であることの余裕からであろうか、ふっと力を抜いて柔らかな表情を見せている。左の弟らしい方の子は、少しおどけた風で「どうだ」と言わんばかりに仁王立ち…。そうだ、二人は撮影者に呼び掛けられるまで「水の掛けっこ」をしていたに違いない。兄さんらしい右の子の手にはまだ水の滴が付いている。まさに、水辺のひとときである。背景の林は逆光の中で暗く濃い緑が美しい。小川はその木漏れ日を拾うようにして光り流れていく。優しい光に包まれ、少年の持つ透明感のようなものが爽やかに描かれた作品である。「開放絞り」のためか、左の子のピントが少し甘いようだが、背景の美しいボケもいいし、難しいところである。