「街角の小庭」(3枚組) 藤田寛司

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 被写体の中心は小さな植物やそれらが群生したりしているものであるが、ここにとらえられたものは、その植物そのもの美しさというより、人の手の入らなくなった小さな庭の、そこに生きる植物たちの植生である。植物を中心にその周辺を慎重に取り込みながら、一枚一枚完成度の高い作品に仕上げている。

 小さなスイレンの花が一つ咲いている。それを見つけた作者の心の動きが、そのまま写真になったような②がいい。その②を中央に置き、①ブロックなどの石組みを覆う色とりどりの植物、③建物を覆い隠すようなチガヤの群生…。この左右2枚に補完させながら、この庭空間への作者の心のざわめきがうまく表現されている。