「波紋」 渡邉 修一郎

選評:関東本部副委員 神尾一

作者が早朝に海岸を散歩している時に遭遇した光景だそうである。朝凪の静かな海面に突然海鵜が出現して、波紋を描きながら沖に向かって泳ぎ出したと言う。この予期せぬ出来事を目の当たりにしながらも冷静にカメラのシャッターを押した作者の対応力は素晴らしい。鵜の進行方向の海面のヌメッとした油のような質感も面白いし、鵜の形も良いと思う。唯、トリミングしているせいか、鵜が大き過ぎて全体としては、題名の「波紋」よりも鵜の方に目が行ってしまうのが惜しい。あと、これは無い物ねだりかも知れないが、もう少し粘って何枚か撮って、主題の波紋の形が逆三角形か、鵜の移動によって弧を描くような形になって居れば、鵜の大きさも小さくなるし、更に素晴らしい作品になっていたのではあるまいか。何れにしても何とも不思議な写真である。