「せみ捕り」 遠藤 啓
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
虫捕り網を構えながら大木の幹を慎重に見つめる白シャツの少年。この木のどこかにいるはずだとその瞳は確信している。この子はさっきからじっと動かない。セミはだいぶ上の方に上がってしまったようだ。虫取り網を2段に伸ばしているが果たしてこれで届くかどうか…。ピンク色の虫かごを持ったもう一人の少年。弟だろうか…。虫かごの中はよく見えないが、慎重な持ち方から、きっと何匹か入っているのに違いない。もし白シャツ君が巧くセミを捕ったなら、この場にバタバタとちょっとした「騒ぎ」が起こるだろう。後ろのテントの近くにいる町内のおじさんたちも「なんだ、なんだ」「捕れたか」などと集まってくるかもしれない。この供養塔のある小さな林は、昔から子どもたちの「せみ捕り場」だったのだろう。もしかしたら昔、作者もまたここでせみ捕りを…。スマホに興じる子どもたちより、こういう子どもたちがいてくれることにほっとさせられる作品である。


