「ほら、きれい」 大川 道雄
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
何か映画のワンシーンを見ているような作品である。望遠レンズで少し引きつけたことにより、画面に圧縮効果が生まれ、背景の波がぐっと引き寄せられている。描かれた事柄も、男女二人が海辺に腰を下ろし、女性が男性に差しだした手のひらにはきれいな小石か何かが乗っている…。なんだか「意味深」である。海も少しざわついていて…。否、もっと素直に見ればよい。長年連れ添ってきた夫婦のつかの間の、何でもない光景の一つ…。それでもいいわけが、写真とは不思議なものである。このカットから様々な想像ができそうだ。果たして作者の想いは如何に…。フレーミングがやや不安定なところも、考えようによっては作品の内容と合っていて初々しくていい。あまり写真が「上手く」なってしまうと(作者は十分「上手い」のではあるが)、「決まりすぎて」かえってつまらないものになる。作者の素直な目が生きた作品である。題名も何とも「にくい!」。

