「世界遺産で遊ぶ」  加藤 利光

選評 : 全日写連関東本部副委員  神尾 一

 最初にこの作品を見た時には、まるで木村伊兵衛や、土門拳の時代に引き戻された様な感覚に襲われた。勿論この作品はデジカメで、数年前に撮影された、韮山反射炉近くの江川邸付近との事。この大砲も江戸時代末期に製造された物のレプリカで、それに乗っかって楽しそうに遊んでいる子供達の様子が生き生きと捉えられている。子供達の各々の表情やポーズが実に良く、これぞ正にスナップ写真の王道と言える様な作品である。又、プリント技術も素晴らしく、大砲の砲身、子供の肌の質感等もフィルム写真と見まごうばかりの仕上げである。作者は多分今のコロナ禍での自粛生活や、最近の子供達の自由度の無い生活様式に疑問を抱き、子供達はもっと天真爛漫であれと言う、願いを込めてシャッターを切ったのであろう。尚、蛇足ながら、作品のタイトルは『世界遺産で遊ぶ』と、なってスケールが大きいですね。また反射炉は単独で『世界遺産』になったのではなく、”明治日本の産業革命遺産”と言う23の産業グループで『世界遺産』に認定されました。