「街角」 古池貞夫

選評 : 関東本部委員 小野崎徹

柴又の帝釈天の駅前の情景ですね。「人物の姿に興味を持ち撮影、街角の風景として気に入っています」というコメントが付いていますが、私もこれはとても絶妙のシャッタチャンスだなと思います。この、鞄を下げて、何か看板に見とれているんでしょうかねぇ、この人、営業マンなのか何か得体の知れない、ちょっと歳も定かでない小父さん。店先で見入っている男女の二人連れですね、この男の子の今風と言うか華奢なこと。不思議なのは向こう側で緑色のエプロンを掛けた人、マネキンかなと思ったら、これはちょうど手をひらひらっと振って呼び込みでもしてるんでしょうかねぇ。手前の小父さんと二人連れ、向こうのマネキンのような呼び込みの女性、このタイミングが何とも言えず不思議な雰囲気を醸し出しています。 まぁ、場所も帝釈天の駅前、元々昭和の面影を残した街角ですけれども、更に「男はつらいよ」の舞台ですから、それに相応しい街づくりを心掛けてるんですねぇ。一寸レトロな雰囲気もあります。 で、これは多分ノートリミングだと思うんですが、少しトリミングをしたほうが、この人物の動きがもう一寸浮き上がってくるんではないでしょうか。左側の店先が一寸五月蠅いですね。左上の「おみやげ・柴又たま屋」の看板のところから切ってしまうんですね。いきなり「金のうんこ」が左端に来る訳です。すると、何だろうというこれもまぁ一寸不思議な効果もありますが。それで左を切ると一寸詰まるので、上のオレンジ色の日除けの部分が中途半端なのでこの部分も切った方がスッキリすると思います。左と上を切る、成り行きで少し下の歩道も上と同じぐらい切っても良いでしょう。その方が、人物のこの不思議な面白さ、一寸こう古池さんが注文を付けて人を並べたような面白さ、そんな面白さがありますね。【鈴木洋一註:トリミングして上と左を2割ほど切り落としてある(出品した画像そのままでなく、古池氏のL判の見本通りに私がトリミングした)】(録音テープによる講評を鈴木洋一が要約)

「街角」  古池貞夫