「夏の終わり」 平井 康

講評 : 中村明弘 (全日写連関東本部委員)

「入道雲」「夕日」「花火」と、夏の定番といってもよいほどの被写体を大胆に組んだもの。しかし作者の心はどこまでも繊細である。(左)変形する入道雲、それを遠くに追いやるかのように手前の斜めの窓枠、奥のネット。(中)傾きかけた日はまだじりじりと海を照らす。やがて訪れる夜を予兆するわずかな風を感じながらか、人影が夕日に向かう。(右)そして花火の夜。これも遠くに・・・、である。三枚を眺める目と心は、まるで「ゆく夏」を惜しむかのように行きつ戻りつし始める。 

撰者の夏への思いと、若い作者のそれとは違うかもしれないが、いや、違って当たり前だが、また一夏が終わっていくのだと、しみじみと、もの思わせてくれる組写真である。