「湯の町」 鈴木裕子

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

今月の例会に向けて「組写真にトライしたい」と言っていた作者。左は怪しげな猫、後ろに人影。2枚目、銭湯の文字が見える湯屋の玄関。3枚目、ゆらゆらとうごめく金魚たち、ぬめっとしたその表面と水面のゆらめき。何か猥雑なものを持つ温泉街の匂いや、生暖かいような湿気をこの写真から感じられる。物語も紡ぎだされそうだ。ただ、左右の写真に比べて真ん中は、平面的になってしまったのが惜しい。ともかくも、作者の思いを超えて、見るものの記憶を呼び覚ましてくれる組写真が生まれたということだ。