「棚田春秋」 矢島一美 (3枚組)

選評 : 関東本部委員 中村明弘

 

田植え、実りの秋、そして穫り入れと、棚田の四季の移り変わりを追って3枚に組んだもの。黄金の稲穂を眺める麦藁帽の人物の後ろ姿からは、一仕事し終えた安堵感のようなものが出ている。この棚田に働く人たち(それはボランティアのような人たちかも知れないが)の「米作りの喜び」のようなものがこの組写真のテーマなのであろう。3枚の構成もそれなりに成り立っていると思う。しかし、稲が実るまでの棚田の姿の変化を軸にしつつ、3枚の写真にも構成上の変化を持たせようとすることは、きっと難しい作業だったにちがいない。もう少し単純に考え、ある時期(例えば収穫を迎えた棚田)に焦点を当て、メインの写真を決め、少し脇役となるものを組み合わせながら、「収穫の喜び」を表すなどという方がすっきりしたかもしれない。あまりいくつもの要素を放り込もうとしないで、この構成力を生かし、より魅力的な組写真を生み出していってほしい。