「祭りが行く」 近藤文徳
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
小さな町の秋祭り。閑散とした通りを祭りの屋台が通り過ぎる。それを見送るのは親子だろうか。ブロック塀にちょこんと座った男の子とTシャツにジーンズ姿のがっちりした体格の男性。祭りには…? 男性の乗ってきた自転車だろうか、ちょっと写っている。行列に少し遅れた黄色のシャツの男の子。黄色い背中がぽつんぽつんと奥へ…。「祭り」が行き過ぎ、なにか放り出されたようなぽかんとした時間がそこに生まれつつあるような、そんな気分の写真である。こんなところによく作者は目をとめたものだ。こうしたなんでもないような「隙間のような時間」…。普段から狙っていたものかもしれない。きっとそうした潜在意識が撮らせたのだろう。祭り本体の賑やかな写真では全くないが、なにか、捨てがたい魅力を持った写真である。
「祭りが行く」 近藤文徳