「時の流れ」 奥島美樹

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

こんなに小さな子なのに、まるで映画の主人公でもあるかのような存在感がある。電車の他、人気のないプラットホームという設定がそう思わせるのだろうか。背景を満たす柔らかな光の拡散が、かすかにラインライトを作り、少年を浮き上がらせる。美しい描写だ。きりりと見開いた瞳が見つめる先には、彼が信頼を寄せる母親の姿があるに違いないのだが…。どこか切なく、美しい時の流れを感じさせる作品である。

「時の流れ」奥島美樹