「大きな背中」 望月導章

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 今、少女は不思議な物語の世界に入りかけている。この二人の紳士の像は、これまでもたくさん写されてきたが、こんな不思議な世界への入り口であるかのようにとらえられた写真は見たことがない。撮影した時間帯もよかった。わずかに明るさの残った空。下からの人工光が銅像の一部に異様な輝きを与え、マスクをした少女の顔を照らし出す。紳士の像の体の傾きと少女の傾きが一体になって弧を描き、奥の紳士の方へと引き込まれる。その後方は光の薄れゆく美しい空間。すでに異次元の世界がそこに描かれているようでもある。逢魔が時のつかの間、作者の思いをはるかに超えた世界が写ってしまった…。