「春の日」 鈴木裕子

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

山道を登ったところに姿を現した山鳩の写真と、両手を広げてあふれんばかりの光の中へ駆け出す少女の写真、この左右2枚が対をなして、小さい生命の息遣い、その確かな存在を感じさせる。真ん中のリュックと袋からは大きな竹の子がにょっきりと顔を出していて、ほほえましい。まさしくおだやかな春の日である。写真を組む楽しみは、こうして撮ってきた写真が作者の心を通してつながって、わずか3枚の写真ではあるが、豊かなイメージの世界を作ることができるところにある。見るものへの、春の喜びの「おすそ分け」である。