「親子でメイク」 池田三吉

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

祭りの化粧、それも親子で狐の顔を作っている。狐の祭り…なのだろう。祭りの化粧というのは、化粧することで非日常空間にいる神の代理人になるということだそうだ。そういう「ハレ」の場に、「母と子」という日常(「ケ」)がダブって顔を出しているところがこの写真の面白いところだ。母親の念入りな化粧に比べれば、お印程度の幼子の化粧。さすがにわが子に自分と同じような化粧は施せなかったのだろう。そんな母の想いまでもが感じられ、心が動かされる。背景のたっぷりと流れる大きな川。少し斜めに傾いた対岸の土手、左上に抜けた空間など、非日常感を補強する道具立ての存在も、この写真を支える魅力の一つになっている。