「ゴジラの夕餉(ゆうげ)」  野崎 三郎

選評 : 全日写連関東本部副委員  神尾 一

 西伊豆町の海岸に有る、通称ゴジラ岩、今は“ゴジラッチョ”と呼ばれて居る有名な奇岩を写した写真である。この作品の面白い点は、岩を主題とせずにシルエット風に人影を入れ、それらの人々の動きを主題とした事で、最初に見た時は目が画面左の奇岩に引き付けられて、その姿があたかも“ゴジラ”が指をくわえて何かを食べたいような素振りをして居る様な所に目が行くが、視線は次第に画面右側のシルエット状の人々の方へ引き寄せられる。これらの人々は釣り船に乗ってこの岩場で磯釣りをしていたのであろうが、夕方になったので釣り船が迎えに来て、帰り支度をしているのであろう。それがあたかも指を咥えて食事を待つ“ゴジラ”に餌やりをしている飼育員?の様に思えたのであろう。茜色に染まる空に雲一つなく、良く見ると鳥がうっすらと写っている。この場所は、従来多数の作品が撮られた有名な場所にも拘らず、撮影時のアングル取りの巧みさにより、輝く夕日や雲が無く、非日常的で、二次元的な影絵風に表現されて居り、従来見た事も無いファンタジックな世界を創出している。作者の豊かな想像性と、巧みな撮影技術のなせる技であろう。