「花粉塗れ」 森田光衛
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
花粉まみれのクマバチ。体長2センチ程度、ハナバチの仲間だそうだ。体が大きくて、低音で大きな羽音を「ブーン」とたてて飛んでくる姿はちょっと怖そうだ。花粉だらけになって、赤い大きな花につかまって一休みといったところだろうか。そんな様子になんとなく「かわいいな」と思ったのだが、背景になっているこの花の鮮やかな色彩(オレンジレッド)のグラデーションに包まれているこの雰囲気も影響しているのだろう。画面左に少し抜けた部分を入れたフレーミングなど、作者は、単に図鑑的にではなく、この小さな生き物に沿うようにして息を凝らし、撮影していることが伝わってくる。有名な「熊蜂の飛行」という楽曲があるが、そういう激しさとは全く違った静かな時間も、彼らにはあるのだ。そこを捉えたのがこの作品である。
ちなみに、この写真の熊蜂は複眼が細長くてメスのようだ。メスは毒針を持っているらしいが、掴んだり巣を攻撃したりしなければ刺してくることはないとのこと。オスには毒針はない。熊蜂はどうやら穏やかな性格の持ち主であるらしい。もちろん、作者は、そんなことはとうに承知の上の撮影…。