「梅雨明け間近」 竹之内範明

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 3枚の写真をうっとりと眺めてしまった。雲間から強い陽が里芋の分厚い葉に差し始めた。雨の滴が芙蓉の花びらに残る。青空も顔を出す。雨上がり道を帰る二人…。3枚共に、スポットライト効果のようにして画面の中心に目が引き寄せられる。右の一枚、「じいじと孫」の後ろ姿の写真は、いつまで見ていても見飽きない魅力がある。雨がやんで2本のこうもり傘はじいじの左手に。手を引かれて歩く孫の長靴がかわいい。これら3枚の展開も見事だ。むっとした湿気に包まれた①、芙蓉の花②のピンク色が、雨上がりに一服の清涼剤となってさわやかさを生む。そんな中、③家に帰る二人の後姿が梅雨明けを予感させ、何か明るいものを感じさせる。この静かな幸福感はコロナ禍にあって、よりかけがえのないものに思えてくる。